コラム

市場シェア率とは?市場シェア拡大とシェア率向上に大切な戦略例

マーケットシェア拡大

市場シェア率は、単なる数値ではなく、企業の製品やサービスが市場でどれだけの影響力を持っているかを示す重要な指標です。

成功する企業は、自社の市場シェアを着実に拡大し、競合他社を圧倒する戦略を構築しています。

そのため、市場シェアの拡大ないしシェア率向上は企業戦略の中で特に重要視され、さまざまな手法や参考モデルが展開されています。

今回は市場シェア率の重要性を解説しつつ、市場シェア拡大に役立つ戦略について紹介します。

参考となり、経営の一助となれば幸いです。

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シェア率とは

「シェア率」とは自社の商品やサービスが、その市場において占める割合のことです。

一般的に「市場占有率」「マーケットシェア」などとも呼ばれ「絶対的市場シェア率」と「相対的市場シェア率」の2種類に大別されます。

多くの企業はシェア率を高めるため、キャンペーンを行ったり、価格の割引を行ったりなどさまざまな戦略を立てています。

市場シェア率の重要性

企業を経営するにあたって、市場シェア率は切っても切れない関係といえるでしょう。

市場シェア率が高いほど、自社が持つ市場への影響力が大きく、顧客が多いことを示しています。

そのため企業と顧客の結び付きを強める機会も多く、より大きなマーケティング効果が期待できるなどのメリットがあります。(市場シェア率のメリットとデメリットの詳細は後述)

市場シェア率は「絶対的市場シェア率」と「相対的市場シェア率」の2つに分類されます。

目的によって確認する数値が異なるため、しっかりとこの2つの違いを把握しておきましょう。

絶対的市場シェア率

絶対的市場シェア率とは、自社の商品やサービスが「市場全体の売上」に対して、どの程度の割合を占めているのかを示す数値です。

絶対的市場シェア率の大きな特徴として、市場をどう定義するかによって見方が変わることが挙げられます。そのため、調査目的を柔軟に調整することができます。

例えば、対象とする市場を「自動車市場」と広く定義したり、逆に「◯◯地域在住の30代男性、会社員が購入する自動車市場」などのように、ペルソナに合わせて地域や年齢の条件を細かく定義することで市場を絞ることもできます。

絶対的市場シェア率は

自社の商品・サービスの売上 ÷ 市場全体の売上 × 100

で算出することができます。

相対的市場シェア率

相対的市場シェア率とは「競合他社のシェア率」に対して、自社商品やサービスがどの程度の割合なのかを比較する際に活用する数値です。

対象となる競合他社は適当に選ぶものではなく、多くはその市場においてシェア率1位を獲得している企業を選びます。

計算方法は

自社の市場シェア率 ÷ 業界トップ企業の市場シェア率

です。

競合他社のシェア率分析について注意点

シェア率に限らず、競合他社の分析を行う場合には何を目的とするのか明確にしておかなければなりません

目的を明確にしておかなければ、調査を行うこと自体が目的となってしまう恐れがあります。

そうなれば調査結果を有効に活用できない上に、膨大な時間とコストを無駄にしてしまう可能性もあるでしょう。

分析を行う際には、競合となる企業や商品・サービスなどを明確にした上で調査対象を絞り込むと良いです。

市場シェア率を把握するための調査とデータの活用

市場シェア率を把握するためには「市場調査(マーケットリサーチ)」を行う必要があります。

現在までの市場状況の把握を目的とし、分析だけでなく分析に用いる情報の収集、調査なども含んだものです。

市場調査の実施によって、市場シェア率の把握に必要な数値だけでなく、市場におけるトレンドや競合他社の状況などを知ることができます。

これらの情報を精査することで、自社が持つ課題点などの早期発見が可能です。

密度の高い市場調査は円滑な事業展開と失敗するリスクの低減につながります

車市場で例えるならば、対象となる商品の所有率はどのくらいか、一世帯当たりの保有台数はいくつか、買い替えまでの年数はどれくらいのサイクルか、などの調査が挙げられます。

これらから、企業の理想とする数値との差や市場ニーズと自社製品との乖離を導き出すことができます。

市場シェア率のメリットとデメリット

高い市場シェアを持つことで考えられるデメリットは、メリットと比べてあまり多くありません。

しかし自社が被るものではなくとも、自社が高い市場シェア率を保持することで他社へ与えかねない悪影響などは考慮しておいた方が良いでしょう。

メリット

高い市場シェア率を持つことによるメリットとして、信頼度の向上が挙げられます。

市場において高いシェア率を誇るということは、それだけ顧客の目に触れる機会が多いということ。

そのため、より大きなマーケティング効果が期待できます。

信頼度の高さと露出の多さなどにより、新規顧客にも選ばれやすいという利点があります。

新規顧客の獲得はマーケティングやキャンペーンなど、既存顧客の流出防止よりも費用がかかる傾向にありますが、シェア率の高い企業においては比較的労力を割かずに済むでしょう。

また、競合相手に価格をリードできるため、価格を下げてシェア拡大を図ったり、逆に価格を上げて収益性を向上させたりと、戦略の幅が広がります

デメリット

市場に対しての影響力が強く、支配的な存在となるが故に競争環境において他の企業や新規参入者に対して不利な影響を与える可能性があります。

資金力やブランド力による新規参入の阻害や、価格の値上げによる市場独占などにつながる可能性は、市場シェアのトップをとった際には常に念頭に入れておきましょう。

関連記事:売上低迷の原因とは?ロジックツリーを使って売上を伸ばす戦略を立てるには

市場シェアを高めるために鍵となる戦略例など

市場シェアの拡大は市場シェア率の増加につながります。

市場シェアは企業が特定の市場で占有する売上高や顧客数などの割合を示しているため、これを拡大することで市場シェア率が向上するのは必然のことです。

つまり、市場シェア率を高めるためには市場シェアの拡大が鍵となるのです。

「市場シェアの拡大」と一言でいっても、市場の形態はさまざま。

既存市場の場合もありますし、新規市場の場合も考えられます。

また、市場において何を基準に目標を立てれば良いのか判断に困る場合があるでしょう。

この場合に参考となるのが「クープマン目標値」です。

この章では市場シェアの目標値となる「クープマン目標値」と、市場拡大の戦略立てに役立つモデルである「アンゾフの成長マトリクス」について解説します。

関連記事:【売上を上げる方法が知りたい方へ】売上を上げるにはどうすればいいのか徹底解説

関連記事:市場浸透戦略を用いた市場シェア拡大の方法とは。アンゾフの成長マトリクスの事例を交えて紹介

市場シェアの目標値「クープマン目標値」

具体的な目標が設定されていない場合、新規市場への進出や他の戦略検討を実施したところで期待する結果につながりにくいでしょう。

新規市場への参入や戦略の立案において重要な指標となるのが「クープマン目標値」です。

これは、アメリカの数学者B.O.クープマンが提唱した「ランチェスター戦略モデル式」に基づき算出されたもので、主に市場シェアに関する目標値を指します。

クープマン目標値は、対象市場における企業や製品・商品のポジショニングや競争上の優劣を評価する上でとても有用です。

この目標値を考慮することで戦略の方向性が明確なものとなり、成功への道を拓く手助けとなるでしょう。

クープマン目標値には具体的に

  • 独占的市場シェア
  • 相対的安定シェア
  • 市場影響シェア
  • 並列的上位シェア
  • 市場的認知シェア
  • 市場的存在シェア
  • 市場橋頭堡シェア

があります。

【目標値1】独占的市場シェア(上限目標値)73.9%

「独占的市場シェア」とは、市場におけるトップ企業のシェアが73.9%を超えている状態を指します。

この状態になると、トップ企業は市場を完全にコントロールすることができ、シェアを逆転されることは短期間ではほとんどありません。

そのため、独占的市場シェアを獲得した企業は、業界トップの地位を確立し、安定した事業展開が可能となります

ただし、独占的市場シェアは、独占禁止法など政府の規制対象となる可能性があります。

独占的市場シェアの立場にいる企業は、業界内の競合より政府の規制に目を配った方が良いかもしれません。

また、トップ2ブランドが合わせて73.9%以上を占めている場合を「二大寡占市場」と呼びます。

二大寡占市場では、トップ2ブランドが市場を支配しており、他社が参入やシェアアップを図ることが困難となります。

【目標値2】相対的安定シェア(安定目標値)41.7%

「安定目標値」とも呼ばれる「相対的安定シェア」は、41.7%以上のマーケットシェアを獲得している状態で、名前の通り比較的安定した地位の確保が期待できます。

相対的安定シェアは、市場獲得の最終目標として掲げられることが多い数値です。
このシェアをとった場合、安定した地位が得られ、不測の事態に見舞われない限り、逆転されることはないといえるでしょう。

相対的安定シェアをとることにより、下位ブランドや下位企業はシェアを上げづらくなります。

すでにその市場の大部分を獲得しており、下位企業は新規顧客の獲得が難しくなるためです。

また、トップ企業は下位企業がシェアを上げようとすると、価格競争や広告宣伝などで対抗してくる可能性があります。

一般的には「40%目標」といって用いられることが多い相対的安定シェアですが、これはあくまでも目安です。

市場の規模や成長性、競合他社のシェア、自社の競争優位性など、さまざまな要素を考慮して、適切な目標値を設定する必要があります。

【目標値3】市場影響シェア(下限目標値)26.1%

「市場影響シェア」は「下限目標値」ともいい、対象市場に影響を与える水準値として目標に設定されるシェアです。

「市場に影響を与える」とは、ある企業が新商品やサービスの投入などの新しい動きをしたときに、競合企業も同調、または対抗手段を取らざるを得ない状況を指します。

下限目標値という別名の通り、26.1%という数字は決して高い数値ではありません。

トップ企業が持つマーケットシェアとしては心許なく、下位企業からいつ逆転されるかどうか分からない、とても不安定な状態です。

業界によってはこのシェアを確保することが、=業界トップ企業である場合もあります。

市場影響シェアを上回ると、競争状況から一歩リードした状態といえるでしょう。

さらに市場影響シェアの特徴として、シェア2位の企業も市場へ影響を与えてしまうことも挙げられます。

【目標値4】並列的上位シェア 19.3%

複数の企業が競争し拮抗している状態で、どの企業も安定的な地位を得られていない状態を「並列的上位シェア」と呼びます。

このシェア率は、19.3%です。

並列的上位シェアは、複数企業が拮抗した競争のときに多く見られるシェア状態です。この状態ではどの企業も安定したトップの地位を築いておらず、競争は激化しています

この場合、競合他社に先んじて市場影響シェアである26.1%を獲得することが目標となります。

市場影響シェアを獲得することができれば、競争状況から一歩抜け出し、安定した事業展開が可能となるでしょう。

【目標値5】市場的認知シェア(影響目標値)10.9%

市場的認知シェアとは、市場において存在が確認される程度のシェア目標であり、消費者が純粋想起(※)できるレベルのシェアです。

市場的認知シェアに達しない企業やブランドは、BtoCの場合は市場における消費者、BtoBの場合は企業の担当者に存在を知られていない状態といえます。

市場的認知シェア以下のシェアでは、プロモーションや営業活動にかなり苦労することになります。

消費者や企業担当者に存在を認識されておらず、商品やサービスの購入や契約を獲得することが難しくなるためです。

市場的認知シェアを確保するためにはブランド認知度を高め、積極的な広告宣伝や販売促進活動を行うことが大切な戦略方針の一つとなります。

※純粋想起:アンケートなどで「◯◯といえば?」と聞いて写真などのヒントのない状態から想起、回答してもらうこと

【目標値6】市場的存在シェア(存在目標値)6.8%

市場において存在が許されるシェアは、6.8%と定義されています。

このシェア率に達しないブランドは、消費者に存在を認識してもらえないため、撤退を検討する必要があるでしょう。

※助成想起:アンケートなどで「◯◯といえば?」と聞いて、写真などのヒントを与えた上で想起、回答してもらうこと

【目標値7】市場橋頭堡シェア 2.8%

市場橋頭堡シェアとは、市場におけるシェアが2.8%以上ある状態を指します。

このシェア率は競合他社から競争相手だと認められることはないものの、市場に参入するための足がかりを築いた状態といえます。

市場橋頭堡シェアを獲得した企業は弱者の競争戦略を始めます。

弱者の競争戦略とは、市場におけるトップ企業と直接対決するのではなく、ニッチな市場や顧客層に焦点を当て、競争優位を獲得する戦略のことです。

市場橋頭堡シェアは、市場参入の最初の目標として設定されることが多い数字です。

このシェア率を獲得することで、企業はようやく市場に存在感を示すことができるようになる、と考えられます。

アンゾフの成長マトリクス

アンゾフの成長マトリクスは縦軸と横軸に「市場」「製品」の2つを取り、それぞれの軸を「既存」「新規」の2区分を設けることで、企業の成長戦略を4象限に分類しています。

  • 新規市場×新規製品
  • 既存市場×新規製品
  • 既存市場×既存製品
  • 新規市場×既存製品

事業拡大には上記の4種類があるとして、それぞれのリスクと可能性を提示したものがアンゾフの成長マトリクスです。

新規市場×新規製品

新しい市場に新しい製品・サービスを投入する戦略は「多角化戦略」と呼ばれ、既存の市場や事業に依存しない新たな収益源を獲得することを目的としています。

多角化戦略には、以下の4種類があります。

水平型多角化:既存市場と隣接した市場に既存技術を活かした新製品を投入する戦略
(例:自動車メーカーが新車販売に加えて、レンタカー事業やカーシェアリング事業に参入する)

垂直型多角化:既存市場の川上・川下の市場に、既存技術を活かした新製品を投入する戦略
(例:自動車部品メーカーが、自社で製造した部品を組み立てた自動車の販売に参入する)

集中型多角化:これまでと全く違う新規市場に既存技術を活かした新製品を投入する戦略
(例:食品メーカーが、食品加工技術を活かして化粧品事業に参入する)

集成型多角化:これまでとまったく違う新市場に既存技術と関連のない新製品を投入する戦略
(例:IT企業が、IT技術を活かして教育事業に参入する)

多角化戦略は、新しい市場や事業に参入することで、新たな収益源を獲得できるというメリットがあります。

また、既存事業のリスクが分散できるというメリットもあります。

しかし新しい市場や事業への参入には多額の投資やリスクが伴うため、慎重な検討が必要です。

新規市場進出や新製品開発による恩恵もありますが、大きなリスクも伴う戦略が「新規製品×新規市場」です。

既存市場×新規製品

既存市場に新しい製品・サービスを投入する戦略で「新商品開発戦略」とも呼ばれています。

既存市場の成長率が低い場合でも、新製品の開発により新たな成長機会を創出できる可能性を秘めています。

すでに顧客理解が深まっているため、顧客のニーズに沿った新しい商品・サービスの提供がしやすいのも特徴です。

比較的リスクが小さい戦略といえるでしょう。

例えば、自動車メーカーが既存のガソリン車に加えて、電気自動車やハイブリッド車を販売する戦略は、既存の自動車市場の顧客をターゲットにしています。

顧客のニーズを理解した上で、電気自動車やハイブリッド車の開発や販売を行うことが可能です。

既存市場×既存製品

既存市場に既存の製品を浸透させていく戦略のことで「市場浸透戦略」とも言います。

市場浸透戦略は市場の成長率が低い場合でも、既存製品の認知度や利用率を高めることで成長を促すことができる場合があります。

既存製品の販売促進により顧客の購買頻度や購買量などを増やすことも可能です。

市場浸透戦略を実行する上で重要なポイントは、既存市場における自社既存製品の認知度を高めることです。

既存市場における自社既存製品の認知度を浸透させていくためにできることとして、定期的なキャンペーンや丁寧なアフターサービスの徹底が挙げられます。

宣伝方法を変更してみたり、商品の割引キャンペーンを行ったりすることが実際の行動として考えられるでしょう。

新規市場×既存製品

既存製品をこれまでと異なる市場に売り出す戦略で「新市場開拓戦略」と呼ばれます。

この戦略は企業の事業展開を拡大し、新たな顧客層を獲得することにつながります。

既存製品をそのまま販売するため、新製品を開発するコストが比較的少なくて済みます。

また、販路を拡大するだけであれば、リスクも少ない戦略といえるでしょう。

しかし、新規市場の顧客が既存市場とは異なる価値観やニーズを持っていた場合、新規市場への適応が難しい場合もあります

例えば、今まで女性向けの商品・サービスを提供していた企業が男性向けのサービスを出すようになった場合、男性の価値観やニーズを理解し、適切なマーケティングを行う必要があります。

また、国内市場から海外市場へ進出する場合、海外の文化や商習慣を理解し、それに適したビジネスモデルを構築する必要があるでしょう。

このように、新市場開拓戦略は比較的リスクの少ない戦略ですが、新規市場の顧客を理解し、適切なマーケティングを行うことが鍵となります。

市場シェアと市場シェア率を意識した戦略設計をしよう

企業の成長・発展において、市場シェアは重要な指標の一つです。

市場シェア率は、市場環境の変化によって常に変化しています。

そのため、定期的に市場シェア率の変化をモニタリングし、必要に応じて戦略を見直すことが重要です。

市場シェアと市場シェア率を意識した戦略設計をすることで、企業はより高い成果を上げることができるでしょう。

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