コラム

人材育成をする意味とは?教育と育成の違いは?育成で大切なことと一緒に詳しく解説

人材育成

人材育成において大切なことは一人一人と向き合うことです。

しかし「一人一人と向き合う」といっても具体的に何をすれば良いのか分からない方も少なくないでしょう。

そもそも人材育成を行う目的をしっかりと理解していなければ、スタートから計画立てまで全て曖昧なまま進みかねません。

例えば1on1(個人面談)で社員から話を聞いたとしても、人材育成の方針がきちんと伝わっていなければ、ただ話を聞いただけで終わってしまう恐れがあります。

今回は人材育成の目的や大切なこと、具体的な人材育成制度などを解説します。

これまで人材育成してきたけれど思うような成果を得られなかった方や、近々人材育成を考えている方は、ぜひこの記事をご参考ください。

関連記事:【人材育成を考えている企業へ】育成担当者の仕事内容や具体的な教育方法を紹介!

中小企業119
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人材育成とは?

人材育成の本質は、企業に貢献できる社員を育成し、企業の成長につなげることです。

そのためには、社員に新たなスキルを身に付けてもらったり、企業の掲げる理念を共有することが必要です。

ここで重要なのが、自分の能力向上が企業の発展に関係していると各社員が自覚することです。
こういった当事者意識も、人材育成を通じて教育していきましょう

人材育成と人材教育の違いとは

人材育成は企業の成長につながる社員を育成することです。

対象者への指導を行う上司や先輩が必要であり、多忙な業務の合間を縫って人材育成を行わなければなりません。

一方、人材教育は、単純に知識やスキルを教えることを指します。
主な目的が知識などの取得であるため、個人の努力で済ませる場合も含まれます。

また、人材育成は意味を広く捉えることが多く、人材教育は人材育成における手段のうちの一つとして考えられます。

さらに人材育成と人材教育の大きな違いとして「意図的に望ましい成長をさせるかどうか」が挙げられます

人材育成の目的は人材を育てることではなく、企業の成長や事業の推進です。

企業に貢献できる人物として望ましい姿を事前に描いておくのが人材育成であるため、この部分で人材教育とは大きな違いがあります。

人材育成の目的

人材育成の最終的な目的は企業の業績向上や将来的な成長です。
企業に貢献できる社員を育成することで、最終的に企業の成長につながることを目標としています。

人材を育てること自体が人材育成の本質ではないことは、前提として理解しておきましょう。

ほとんどの企業が、自社の成長を求めています。

どうすれば企業が成長するのかを掘り下げたとき、企業ができることとして「業務の効率化」や「チームワークの強化」などが挙げられます。

人材育成を通して社員一人一人のスキルを向上させることで、業務効率の向上が期待できます。

また、人材育成による離職率の低下も企業の成長に欠かせません。
人材育成は一人一人に目を向け、適切な育成計画を立てます。

場合によっては、その過程で社員の自己肯定感や責任感などを育むことが可能です。

自己肯定感や責任感、企業方針に対する共感など、人材育成を通じて育まれた感情が離職防止につながると考えられています。

離職率が低い企業は一般的に社会からの評価も高く、就職の応募者増加にもつながります。

人材育成における課題と解決策

「人材育成をする」と言葉にするのは簡単です。

しかし実際の行動に移すとなると、さまざまな課題に行き当たります。

厚生労働省の調査結果(「平成30年版 労働経済の分析」)によると

  • 従業員の業務が多忙で、人材育成に充てる時間を確保できない|53.5%
  • 上長等の育成能力や指導意識が不足している|45.4%
  • 従業員が能力開発に取り組むため不在にしても、その間、他の人が業務を代替できる体制が構築できていない|39.5%
  • 育成指導を受ける従業員側の意欲が低い|39.1%
  • 社内で人材育成を行う雰囲気がない|30.4%

など、多くの企業が共通的に抱えている課題が確認できます。

上記の調査結果は組織側が感じている人材育成に対する課題点のトップ5です。

逆説的に言えば、これらの課題を解決すると人材育成がスムーズにできるといえるでしょう。

この章ではそれぞれの課題の詳細と、解決策を紹介します。

人材育成に充てる時間を確保できない

人材育成の担当者は、他の業務と並行して指導を行うことが多いと思います。

人材育成に専念できれば理想的ですが、現実的には難しいでしょう。
業務の優先順位を考えると、育成指導を後回しにしてしまうことがあるかもしれません。

このような状況が続くと、学ぶ側のモチベーションが低下し、人材育成の成果が上がらない恐れがあります。

育成指導が停滞する状況を回避するためには、企業側が育成担当者の業務負担を調整することが重要です。

育成担当者に全てを押し付けず、組織全体で人材育成をサポートすることが大切です。

育成能力や指導意識が不足している

人材育成において、育成担当者のスキルは重要な要素です。
育成スキルが不足していると、場当たり的な指導となってしまったり、適切な対応ができなくなったりする可能性があります。

例えば、担当者の現状把握能力が不足していると、学ぶ側の習熟度を見誤り、現状のレベル以上の業務を任せてしまうことがあります。

その他、コミュニケーションスキルが不足していると、学ぶ側との関係構築がうまくいかず、指導が効果的に行われない可能性があります。

人材育成担当者に必要なスキルについては、後ほど詳しく紹介します。

協力体制が不十分

組織全体が人材育成に対して理解を示し、協力的になる必要があります。

多くの企業において、人材育成担当者は自分の通常業務と平行して人材育成を行います。

育成担当者が自分の業務を優先した結果、人材育成の方が疎かになってしまうということも十分考えられます。

そうなってしまわないために、人材育成担当者の業務量や範囲を企業が正しく把握し、業務配分を考え直してあげることが大切です。
企業側が理解を示し、業務負担を調整することで育成指導の停滞を防ぐことができるでしょう。

また「育成は本来の業務ではない」と、人材育成を軽視する管理職も中にはいるようです。

組織全体で人材育成の重要性を理解し、業務配分による協力体制を構築し、無理のない育成計画を策定することが大切です。

育成指導を受ける社員の意欲が低い

企業全体が人材育成に対する意欲を持っていても、育成される側に意欲がなければ期待しているような効果は得られません。

少しでも育成対象者の意欲を引き出すために、まず人材育成を行う目的を話しましょう。

「なぜ人材育成を実施するのか」という目的を事前に伝えることで、企業側が対象者へ抱く「こうなってほしい」のイメージを対象者が抱きやすくなります。

組織全体の持つビジョンや育成の目的をあらかじめ共有しておくことで、対象者側としては学びの姿勢を保ちやすくなるでしょう。

育成対象者の意欲を引き出すには、人材育成の目的と重要性をあらかじめ共有することが大切です。

  • 人材育成の目的や目標を明確に示す
  • 人材育成の必要性や重要性を説明する
  • 人材育成によってどのような成長が期待できるのかを伝える

これらを事前に共有しておくことで、育成対象者が人材育成の意味や意義を理解し、自らの成長につなげようとする意欲の向上が見込めます。

人材育成を行う雰囲気がない

人材を育てるには、評価の仕組みや学びの支援などの環境づくりも大切です。

組織全体が人材育成に対して無関心であれば対象者の意欲も低下しますし、担当者の業務量や負担が増えるばかりです

ただ、協力的でありさえすれば良いという話でもありません。

人材育成に携わった人たちを適切に評価する機会や成果が可視化されるシステムなどを併せて導入することがおすすめです。

例えば、担当者や対象者の頑張りを客観的に評価するための人事制度が挙げられます。

人材育成そのものが目的化している

人材育成を始める際、目標や到着地点をはっきりと設定していないケースが時々みられます。

教育者をあてがうだけで終わったり、研修開催後のフォローや効果測定を行っていなかったりなど「人材育成をやってる」感で満足していると、結果につながらない人材育成となってしまうかもしれません。

当てはまる組織があれば、改めて「なんのために人材育成を行うのか」と目的などの追求からやり直した方が良いかもしれません。

より効率良く効果の出る人材育成を行いたいのであれば、人材育成の目的を明確化させるのがおすすめです。

人材育成で大切な2つの考え方

人材育成を行うにあたって、前提として持っておくべき考え方があります。

逆にこれらを意識していなければ、どれだけ緻密な育成計画を立てたところでどこかでほころびが生まれてしまうでしょう。

より効果的な人材育成をするのであれば欠かせない考え方であるため「人材育成の目的」と合わせて、社内全体の意識として周知しておきましょう。

人材育成に対して中長期的な目線を持っておく

人材育成は短期間で達成できるものではありません。

先述の通り、人材育成を通じて社員に身に付けてもらうものはただの知識やスキルだけではなく、実践的なものも多いです。

こういった実践的なスキルなどは一朝一夕で身に付くものではなく、長い目で見ることが大切となります。

企業の成長に関連するスキルの例として環境の変化を察知する能力や、順応していく能力が挙げられます。

近年は特に時代や環境の変化が著しいため、組織的にも個人的にも環境の変化を察知して順応していく力が求められているのです。

これらは知識として覚えるだけでは役に立ちません。

経験を重ねることで成熟する実践的な能力であるため、通常の社員研修で培うことは相当難しいでしょう。

社員の自発性を促進する

社員の自発性を促すようなやりとりを心がけましょう。

人材育成において、生産性を高めるのに直接的なスキルなどの教育も必須ですが、それと同等レベルで社員に自発性を持ってもらうことが重要となります。

自発性とは指示されたことをそのまま行うのではなく、誰かに指示されなくても自ら進んで行動に起こすことです。

周りが育成しようといくら努力しても、本人に成長を望む意思や姿勢がなければ人材育成は成り立ちません。

自発的な行動ができる社員は、自ら学び成長していこうという傾向が強まります。
積極的な姿勢で何事にも取り組んでくれるため、人材育成の効果がより高まることが期待できるでしょう。

自発性は社員の特性によっても異なりますが、人材育成を通じてその姿勢を養ってあげることが可能です。

まずは社員が自ら考えて提案、行動する機会を増やしましょう

教育を受ける社員発の行動で何かがいい方向に変化したという成功体験を積ませるのも有効的です。

自発性を高めるための施策として、1on1ミーティングを定期的に実施して、今の環境に対する悩みや将来像を考えさせる機会を設けることが、例として挙げられます。

人材育成に大切なスキル

人材育成を行うにあたり、育成担当者にとって大切なスキルがあります。

これらがなくとも問題はありませんが、やはりより高い効果を期待するならこれらのスキルを持っておいた方が良いでしょう。

ただ、一人が全部持っておく必要はありません。

人材育成は1対1ではなく、一人の社員に複数の担当者が付くことが理想です。

つまり、誰かが持っていないスキルは他の人が補う、ということができるのです。

しかし、やはり各々が全てのスキルを持っていても損はありません。

より高次元な人材育成を目指すのであれば、人材育成担当者のスキル習得にも力を入れると良いでしょう。

現状把握スキル

現状把握スキルは人材育成の計画を立てる際、特に役立ちます。

現場の実情を把握することで今の組織に足りないところが見えてくるため、逆算的に育成で補強すべきところが明確になります。

現状把握スキルがないとなんとなくゴールを設定し、的外れな教育をしてしまうかもしれません。

現状を把握することは課題の発見につながります。
そこから、実情に即した計画を立てることができるため、より効果の高い人材育成が期待できるのです。

例えば、売上の伸び率が鈍化している営業部に原因をヒアリングしたところ、交渉の得意な人材が不足していることが分かったとします。

この場合、新規雇用や人事異動で交渉力のある人材を営業部に配置し育成することで、売上の伸び率に関する課題を解消できるでしょう。

現状を把握する際にはスキルマップなどのツールを利用することがおすすめです。

ツールを利用することにより数値など視覚的に確認することが可能になり、より的確に把握できるうえに他者へも共有しやすくなります。

目標設定・計画スキル

社員の能力や特性に合わせた適切な目標や計画を設定するスキルも重要です。

目標や計画を立てる上で大切なことは「ゴールを明確にすること」「実現が可能なものを設定すること」。

目標や計画のゴールが明確でないまま人材育成を進めてしまうと、方向性がぶれてしまうかもしれません。

「◯◯な人材が欲しい」「◯◯のスキルを身に付けてもらいたい」なども目標や計画のゴールといえますが、曖昧なものではなく、より具体的かつ先を見据えたスキルの習得につながるようなゴールを設定しましょう。

また、実現が難しい、または社員の力量に合っていない(理想が高すぎる)目標を掲げてしまうと、社員のモチベーション低下につながってしまうかもしれません。

例えば、営業部で売上が300万円獲得できる人材Aがいたとしましょう。

この場合、Aさんに対して「来月の売上目標は1,000万円ね」と目標設定するのは、無理があるといえます。

Aさんの現状(売上300万円)よりはるかに大きな数字であり、誰がみても実現不可能だといえるためです。

大きな成長を望むがあまり、実現不可能な目標設定をしてしまうと社員のモチベーションが低下し、逆に本末転倒な結果となってしまうことも否めません。

社員の特性、能力、現状などに目を向け、それらを考慮した上で地に足をつけた目標設定を行いましょう

コミュニケーションスキル

人材育成では、対象者の能力や意欲を把握するために、コミュニケーションスキルが欠かせません。

ビジネスにおけるコミュニケーションスキルは、対話を通じて相手を理解し、共感することで、相手を引き出す力が必要です。

また、分かりやすい説明や上手な手本を示すなど、相手に知識や技術を教えるためのスキルも求められます。

コミュニケーションスキルは、ただ話を聞くだけでなく、相手を理解し、育てるためのスキルであることを覚えておきましょう。

マネジメント能力

マネジメント能力とは、企業の成果を最大化させるために経営資源である「ヒト・モノ・カネ」を管理する能力のことです。

人材育成において大切なマネジメントスキルとは、上記の3つを管理しながら複数のプロジェクトを統括、かつ複数のプロジェクト管理ができることを指します。

育成担当者は自身の通常業務と人材育成を平行して実施しなければなりません。

そのためには限られた時間を効率的に使う必要があります。

人材育成を受ける社員の管理はもちろん、自分の業務をマネジメントする能力も育成担当者には求められるのです。

リーダーシップ力

リーダーシップの定義に関してはさまざまな説が提唱されていますが、有名なのはオーストラリアの経営学者ピーター・ドラッカー氏の理論です。

リーダーシップと聞いて「自分にはそういうカリスマ性はないから」と考える方もいるのではないでしょうか。

しかしドラッカー氏は「組織の目標や優先順位、基準などを定めて維持することを仕事として発揮できること」をリーダーシップとしています。

カリスマ性などのような「人を惹き付ける」要素はリーダーシップではなく、あくまでも煽動的な資質に過ぎないのです。

ドラッカー氏による理想のリーダーシップとは「励まし、前進させ、自分の誇りにすること」

目標の達成には対象者のモチベーション維持が重要な要素となるため、彼の提唱するリーダーシップは、まさに人材育成にうってつけだといえるでしょう。

また、リーダーに関する定義として唯一ドラッカー氏が挙げたのが「『付き従う者』がいること」です。

第三者からの強制ではなく、リーダーを信頼し自分の意思でリーダーに従う人を「付き従う者」としています。

信頼されることについては「リーダーを好きになることでも、常に同意することでもなく、リーダーの発言が真意であると確信を持てること」とドラッカー氏は説明しています。

人材育成計画の立て方

① 現状を把握する

現状を把握することで組織に足りていないものや課題が見つかりやすくなります。

ここでいう現状とは、業績はもちろん、仕事のやり方やどの業務を誰がどのように担っているのかを指します。

さらに各部署・各年次・各階層に何人いるのか、それぞれが何をしているのか、生産性が高いのか、などの情報も加わるとなお良いです。

現状を俯瞰的に見てみると、組織に欠けているところが浮き彫りになります。
そこから必要な人材、スキルなどを逆算的に算出することで人材育成の方向性が見えてくるでしょう。

例えば、社内のミドル層や若手に解消したい課題について聞くと、今気になっていることなどを教えてくれるはずです。

ヒアリングで得た課題について、人材育成などの企業内教育で解消するものかどうかもこの時点で検討しておくと良いでしょう。

人材育成を行うにあたり、課題が曖昧で何から手をつければいいのか分からないという方も少なくありません。

まずは、所属する企業や組織の現状を把握することから始めましょう

現状を把握して終わり、ではなくそこからしっかりと課題を見つけることで、安定したスタートを切ることができます。

② 将来の自社を想定する

①で把握した現状から、数年後にはどうなっているかを想定してみましょう。

3年後や5年後など、期間は企業によってそれぞれ設定してください。(期間が短ければ短いほど、現実との乖離は小さくなります)

◯年後、現状からどれくらい人材が増えているのか、配置はどうなっているのかなどを構想することで「◯年後までには、このスキルを持っている人材が◯◯人必要だ」というように、人材の必要数や必要スキルが分かります。

③ 人材育成の目標を設定

①と②を踏まえた上で人材育成の目標を設定しましょう。

人材育成における目標とは、企業が欲している人材像へ社員を成長させるための指標です。

目標の設定は人材育成の担当者が決める場合や企業が設定する場合、企業介入のもと教育を受ける社員本人が設定する場合(目標管理制度)などがあります。

人事や人材育成担当者は設定した目標を基に、研修やセミナーなどの育成施策を計画しましょう。

人材育成の目標設定は「数値で表され、客観的に判断できる指標であること」「企業の成果にもつながること」が大切です。

人材育成のそもそもの目的は「企業の成長に発展できる人材を育成すること」にあるため、後者はいわずもがなでしょう。
前者に関しては、適切なフィードバックがされず、効果的な人材育成ができないためです。

数値化されていない曖昧な目標を立ててしまうと、目標を達成したか否かを感覚的に判断せざるを得なくなります。

具体的な指示をすることもできないため、教育全体がぼんやりしたものとなる恐れがあります。

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人材育成に役立つフレームワーク4選

この章では人材育成のさまざまな場面で役立つフレームワークを4つ紹介します。

目標設定に活用できるものや人材育成の全体を通して活用できるものなどがあるため、それぞれ適切なタイミングで利用したり、組み合わせて利用することがおすすめです。

SMARTの法則

「SMARTの法則」とは、5つの要素に沿って目標を立てる目標設定手法です。

この法則では各要素に従って目標の検討を行えば、効果的かつ現実的な目標設定ができると考えられています。

SMARTという名称は

  • Specific(具体的な)
  • Measurable(測定可能な)
  • Assignable(誰がやるのか割り当て可能な)
  • Realistic(現実的な)
  • Time-related(期限が明確な)

上記5つの要素を表す英単語の頭文字からきています。

各要素のうちどれか一つでも欠けてしまうと、目指すべき指針を見失ったり、現状に則していない目標となってしまいます

ベーシック法

「ベーシック法」とは「目標項目」「達成基準」「期限設定」「達成計画」4つのステップから構成された、基礎的な目標設定のフレームワークです。

基本のフレームワークで、数あるフレームワークの根底になっているものとされています。

設定する目標がより具体的な方が良いとされているのは「モチベーションが維持しやすい」「目標に対する進捗を確認することができる」ためです。

社員の継続的な成長に具体的かつ丁寧な目標設定は欠かせません。

提示されている各4項目をステップに準じてしっかり考えることで、曖昧に済ませてしまいがちな目標が具体的なものになるというのが、ベーシック法です。

カッツモデル(カッツ理論)

「カッツモデル」とは、マネジメント層の分類と、各層で求められるスキルを示した内容です。

主にマネジメント層は、以下の3種類に分類されます。

  • ロワーマネジメント(監督者):係長、班長など
  • ミドルマネジメント(管理者):部長、課長など
  • トップマネジメント(経営者):社長、CEOなど

また、マネジメントには、以下の3つのスキルが重要視されます。

  • テクニカルスキル(専門能力):仕事の遂行スキル、知識など
  • ヒューマンスキル(対人能力):コミュニケーション能力全般
  • コンセプチュアルスキル(概念化能力):論理的思考、俯瞰力など

カッツモデルを活用すると、立場ごとに必要なスキルを把握しながら教育を進められます。

思考の6段階モデル

「思考の6段階モデル」とは、思考の段階を6つに分類した上で、それぞれの能力を高めることが教育において必要だとする考え方のことです。

教育学者のベンジャミン・ブルーム氏が提唱しました。

思考を「知識→理解→応用→分析→結合→評価」の6つに分類し、それぞれLv.1〜Lv.6の番号が順に振ってあります。

各レベルに適した教育方法を考案することで、個人の思考性質に即した育成施策を講じることができるというのが、この思考の6段階モデルです。

2001年、ブルームの弟子たちによって思考の6段階モデルはアップデートされ「知識」が「記憶」に「評価」が「創造」に変化しました。

Lv.1 記憶:言葉や事実、方法などを知識として保有している
Lv.2 理解:内容の解釈や説明する能力
Lv.3 応用:知識を別の形で活用する能力
Lv.4 分析:全体の要素を1つ1つ分解し理解する能力
Lv.5 評価:内容を分析し、批評する能力
Lv.6 創造:Lv.1~Lv.5までの能力を活かし新しいものを作り出す能力

例えば、Lv1ではeラーニングでの講義・講座を行い、Lv2ではワークショップを行う、などの施策が挙げられるでしょう。

ギャップ分析

現状と理想像の差を把握した上で、理想に到達するために何が必要なのかを分析したり、課題を抽出することを「ギャップ分析」といいます。

ギャップ分析では理想像、つまり目標を立てることから始めますがこの際にSMARTの法則を意識すると良いでしょう。

SMARTに則った目標を立てることで、現状との比較がしやすくなり効率的にギャップを埋めていくことが可能になります

人材育成でスキル以外に大切なこと

人材育成を進めるにあたって、育成担当者のスキルも大切ですがそれ以外にもポイントがあります。

このポイントを抑えた上で育成にあたることで、より高い育成効果が得られるでしょう。

目標を設定する

人材育成を行う上でまず大切なことは、目標を明確にすることです。
先述のSMARTの法則を基に設定するとなお良いでしょう。

その後どれだけ素晴らしい人材育成計画を立てたとしても、目標がなければその計画は見た目だけで中身の伴っていないものだといえます。

そのため、あまり良い効果は得られないでしょう。

組織の人事担当者は、各教育担当者に対して最終的な目標やゴールを事前に共有しておくことが大切です。

現場とのズレが生じないよう、研修の場やセミナーなどを開いて目標設定の重要性について伝えておくと良いでしょう。

モチベーションを管理する

教育を受ける社員のモチベーションを管理することも、人材育成の目標を達成する上で大切です。

教育を受ける社員のモチベーションの低下を防ぎ、業務への興味関心が高まっている状態で人材育成を進めましょう。

ここでいう「モチベーション」とは行動原理のことで「やりたい!」「やらなければならない」といった心理から感情が高まり、行動につながるものを指します。

モチベーションは必ず「目的(目標)」と「動機(行動の理由)」がセットになります。

「モチベーションが低い」とは、意欲が低下しており仕事への積極性や主体性が欠けている状態のことです。

この状態では多くの業務が「やらされている」と受け身の感情に支配されるため、一つ一つの作業にかける時間も長くなり、組織全体の生産性低下につながります。

人によってモチベーションアップにつながる目的や理由は異なるという点は覚えておきましょう。

例えば、年収アップがモチベーションになる人もいれば、社会貢献がモチベーションである方もいます。

これらの特性は一人一人とコミュニケーションを取らなければ知ることができません。
定期的に1on1などを実施して深くコミュニケーションを取るなど、個人に向き合う時間を設けることがおすすめです。

スキルマップを作成する

スキルマップを作成することで、今所属している人材の持つ能力が可視化され、現状の把握も容易になる上、適切な人材配置にも役立ちます。

スキルマップとは「社員の業務に必要なスキルを洗い出して一覧化したもの」です。

それぞれの社員またはチーム、部署などの単位で業務に必要な知識や技能を誰が保有しているか、どの程度のレベルなのかを「見える化」した一覧表ともいえるでしょう。

スキルマップを作成することで社員の所有するスキルが集積され、組織において不足している人材や強化すべきポイントが明確になります

足りないところも一目で確認が取れるため、改善・向上を目的とした研修などの計画がより効果的かつ立てやすくなるでしょう。

スキルマップの作成は先述した「目標を設定する」「モチベーションを管理する」の内容とも通じており、あらゆる場面で活用することができます。

人材育成は役職や階層別に考える

人材育成の対象は場合によって変化します。
メジャーな対象者は新入社員、中堅社員、管理職でしょう。

同じ企業でこれら3種類の社員に対して企業内教育を行う場合、全く同じ教育内容や接し方で行うわけにはいきません。

それぞれに人材教育を行う上でのポイントがあるのです。

この章では各人材育成対象へ教育を行う上でのポイントを紹介します。

新入社員

新入社員を育成する際には、まずは新入社員の視点に立って考えることが大切です。

人材育成担当者と新入社員の間には、大きな経験の差があります。
そのため、担当者からしてみれば「なんでこんなこともできないのか」と考えるようなことでも、新入社員にとってはとても難しいということもあるでしょう。

この差を理解せずに育成を行うと、新入社員を過小評価してしまう可能性があります。
過小評価はモチベーションの低下や新入社員の力量に見合わない業務の割り振りなどを引き起こし、ひいては企業の生産性低下や離職につながる恐れがあります

ただし、新入社員の視点に立って考える際には、注意点もあります。それは、新入社員時代の自分と比較してはいけないということです。

「自分が新入社員のころはもっと頑張ってた」などと、自分の経験と新入社員の経験を比較してしまうと、新入社員を過小評価したり、自分の考えを押し付けたりすることになりかねません。

新入社員を育成する際には、過去の自分ではなく、目の前にいる新入社員をしっかりと見つめ、その人の過去や経験を理解するようにしましょう

また、社員一人一人に個性や特徴があることも忘れてはいけません。

これらを理解し、個々人に合った指導方法や計画を立てることで、人材育成の効果を高めることができます。

中堅社員

中堅社員へ向けた人材育成を行う前に、まず中堅社員に求められる役割を把握しておきましょう。

中堅社員に求められる役割は、業務中核メンバーとしての活躍はもちろん、後輩の育成・指導ができ、さらに管理職と新人の架け橋的な存在です。

これを前提として把握した上で人材育成を行いましょう。

上記の前提を目標として設定したならば、次に面談などで本人の現状を確認すると良いです。

中堅社員本人が、自分の現状と課題を把握することでスムーズに育成に取りかかることができます。

人材育成の担当者が、中堅社員に対してキャリアの道筋を示してあげることがポイントです。

管理職

管理職は、経営理念に基づいた行動が求められるため、経営者の視点に立つことが重要です。

もちろん、育成担当者も、経営理念を理解した上で、管理職育成を行う必要があります。

経営理念に則っていれば、なんでも良いというわけではありません。
管理職には、部下を目標達成に導く役割があります。

部下のマネジメントに必要なスキルは、リーダーシップ、現状把握スキル、経営スキルなど多岐にわたります。
また、判断力や思考力も必要です。

これらのスキルを伸ばすためには、組織論や経営論の知識を習得する研修制度を整えることが効果的です。

社内研修だけでなく、社外研修も検討すると良いでしょう。

人材育成を効果的に行う育成制度例

現状を確認し目標に対して足りない部分や課題点などの洗い出しが済んだ後、具体的な手段を講じていくのが、人材育成の大まかな流れです。

ここでは、よく人材育成で用いられる施策を紹介します。

OJTの実施

「OJT」とは「 On the Job Training」の略で、実際の仕事を通してスキルなどを身に付けさせる教育方法のことです。

実際の業務を教材とし、経験を通じて学んでもらうことができるため、研修やマニュアルの理解だけでは培うことのできない、より実践的な技能や知識などの習得に適しています

OJTは現場で活躍できる人材の育成という点において、とても有効的な教育方法といえるでしょう。

最大限の効果を発揮するためにOJTの前提をよく理解し、計画的に行うことが重要です。

OJTの前提とは「目の前の仕事を教えること」ではない、ということ。

たまに、OJTを目先のやり方を教えることだと勘違いしている育成担当者がいます。

OJTは「意図的・計画的・継続的」に行うからこそ、成果につながるのです。

また、担当者に指導力が伴っていない場合も同様、想定していた成果に到達することは難しいかもしれません。

OJTを行う前に、人材育成担当者を対象とした研修やミーティングを実施することで教え方の情報共有を図るなどの工夫をすることで、この問題は解決します。

OFF-JT

「OFF-JT」は「Off-The-Job Training」の略で、先述のOJTとは逆に研修などのように実務の場を離れて行う教育方法です。

人材育成を受ける社員の職能や階層に分かれて研修を設定することで、各段階で必要なスキルの習得や専門性の高い教育を行うことも可能になります。

また、学ぶ順番が適切であれば業務に必要な知識や技術を漏れなく網羅し、習得することができるでしょう。

OJTは実務を通すため、どうしても育成担当者の時間を大きく消費してしまう点が難点として挙げられました。

一方のOFF-JTは、外部講師による研修やタブレットなどの電子媒体を用いた学習なども含まれるため、育成担当者の時間的リソースを大きく割かなくて済みます

階層別や職能別にわかれて研修を行うことができるため、それぞれの段階で必要なスキルの習得や、より専門性を高める教育を行うことも可能です。

自己啓発

「自己啓発」は定義が広く、自発的に学ぶこと全般を指します。

自己啓発は自分自身の成長が目的ではなく、成長したスキルでいかに組織に貢献できるかを目標に立てることが大切です。

社員一人一人に必要な学びを得てもらうことが可能ですが、多くの企業が社員の自主性に任せています。

就業時間内の学習を許容していない企業も多く、業務外から学ぶ時間を捻出する社員は多くないため、自己啓発を推進する企業は学習環境の提供などの工夫が必要となるでしょう。

MBO(目標管理制度)

MBOとは、社員が自ら目標を設定し、その達成に向けて努力することで、モチベーションを高め、企業の目標達成に貢献するマネジメント手法です。

MBOには下記のような特徴があります。

  • 社員が自ら目標を設定するため、モチベーション維持につながる
  • 目標は企業の方針や進むべき方向に沿ったもの
  • 個人の目標が最終的に企業の利益につながること

そのため、MBOを導入する際には企業の目標を事前に社員へ共有しておくと良いでしょう。

また、企業が社員の目標設定と達成に積極的な姿勢を持つのも大切なポイントです。

目標の達成状況を定期的に確認し、その都度適切なフィードバックを行うことでより高い効果が見込めます。

タレントマネジメント

企業の経営戦略を達成するために、従業員一人一人のスキルや能力(タレント)を最大限に活かすための人事マネジメントを「タレントマネジメント」といいます。

従業員のスキルや能力を把握し、適切なポジションに配置することで、経営戦略の達成に貢献します。

空きポジションの補充だけでなく、新規事業の立ち上げやプロジェクトチームの結成など、新たなニーズに対応した人材配置も可能になります。

タレントマネジメントによって、迅速かつ的確な人材配置を実現し、ビジネス展開のスピードアップにつなげることができます。

ジョブローテーション制度

「ジョブローテーション制度」とは、計画的に社員の職場や職務を変更することです。

仕事環境を変えることでさまざまな経験を積んでもらうことで、社員の成長を促せる効果が期待できます。

社員の適正を見極めた適材適所の配置、社員間のコミュニケーション環境を拡大することによる社内ネットワークの構築や属人化の防止など、ジョブローテーション制度から得られるメリットは多いといえるでしょう。

短いケースでは半年、長くて数年といったスパンで部署や職務の変更を行うため、人材の滞留を防ぐことも可能です。

職務の内容や期間、経験してもらう社員の層などは企業によってさまざまです。

人事評価制度

「人事評価制度」とは、社員の能力や会社への貢献度などを適切に評価し、報酬として反映する管理制度や仕組みのことです。

これにより社員の生産性向上が期待できるでしょう。

人は自分のがんばりに対して不当な評価を与えられるとモチベーションが低下してしまいます

モチベーションの低下した社員は積極性にも欠けるため、生産性も低下しさらに評価は悪化、という悪循環に陥ってしまうでしょう。

人事評価制度では、企業の提示する目標に対して社員がどう行動して結果を残したのか、貢献したのかを事前に設定した評価基準を元に、昇給、出世など等級や報酬に反映します。

「貢献度に対して適切な」評価であるため、降格なども当然含まれます。
人事評価制度を効果的に施行するためには、事前に企業の求める人材像を共有しておくと良いでしょう。

また、評価の基準も明確にしておくことで社員のモチベーションアップにつながります。

メンター制度

「メンター制度」とは社員に対して行う個別支援活動のことです。

企業において「メンター」とは、新入社員や後輩社員の相談に乗り、精神的なサポートを担う先輩社員のことを指します。

新入社員や後輩は「メンティ」と呼ばれます。

メンターとメンティの関係性は職場において自然に発生する先輩後輩の関係性を制度的に作りあげたものです。

人材育成を進めるにあたり、教育を受ける社員の技術的な面はもちろんのこと、精神面のサポートも大切なポイント。

個人の成長を支えるとともに職場内での悩みや問題解決をする役割が必要となるのです。

メンター制度の目的は離職率の低下です。

メンターがメンティの悩みや問題を聞き、解決のためサポートをすることで職場環境や人生設計などに対する負の感情を取り除きます。

そこから派生してメンティの生産性向上も期待できます。

人材育成に大切なのは丁寧な目標設定と一人一人への真摯な対応

企業にとって人材育成は、持続的な成長を実現するために欠かせない取り組みです。
人材育成が効果的に行われれば、社員のスキルや能力を向上させ、企業の競争力を高めることができます。

人材育成において大切なことは、まず目標を明確にすることです。目標が曖昧だと、育成の方向性が定まらず、効果的な育成をすることができません。

目標を設定するには、まず社員や企業の現状を把握し、将来的にどのようなスキルや能力を身につけさせたいかを明確にすることが重要です。

目標を設定したら、それを一人一人の社員に合わせて落とし込む必要があります。

各社員には、得意なことや苦手なこと、興味や関心などが異なります。

そのため、一人一人に合わせた目標を設定し、育成を進めることが大切です。

人材育成は、一朝一夕で成果が出るものではありません。継続的な取り組みが必要です。
丁寧な目標設定と一人一人への対応を心がけ、効果的な人材育成を実現しましょう。

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